残雪を照らす陽の光に一日の長さが少しづつ伸びていることを感じ、春の訪れが待ち遠しいこの頃。
冷たい風の中でも梅の蕾が綻んでくる様子に元気をもらいます。
うつしきでは、二年ぶり二度目となる「熊谷峻 境田亜希 展」を開催いたします。
峻さんは鋳造技法を駆使し、自作の石膏型にガラスを詰め、高温の窯で溶融・冷却することで、唯一無二の作品を生み出しています。
石膏型は作品を取り出す際に壊れるため、すべてが一点もの。
その素材も独特で、購入したガラスに加え、他の作家や亜希さんから譲り受けた廃材ガラスを混ぜ合わせ、
多彩な色彩と模様を生み出しています。
このアプローチは、ガラス工芸において不純物を排除する伝統的な考え方とは一線を画し、むしろ不純物を積極的に取り入れることで新たな美を追求するもの。
割れのリスクを伴いますが、峻さんは金継ぎの技術を活かし、割れた作品も修復しながら提供しています。
その挑戦的な姿勢は陶芸や金属など異なる素材の技法からも影響を受け、陶芸の釉薬が垂れる模様をガラスで表現するなど、独自の世界観を展開しています。
亜希さんは吹きガラスを主とし、高温で溶けたガラスを吹き竿に巻き取り、息を吹き込んで形を作ります。
型を使わないため、彼女の作品もまたすべて一点もの。
透明に近いガラスに粉を振りかけて色をつけ、その振りかけ具合で濃淡が変化します。
代表作の「くゆり」は、ガラスの表面に蝋を焼き付け、燻すことで独特の質感を生み出した作品。
「はなかげ」シリーズは、光が当たることで花のような影が浮かび上がり、オリーブグリーンから始まったこのシリーズは近年では赤も加わり、さらなる展開を見せています。
二人の作品には、ガラスという素材の可能性を最大限に引き出し、独自の美を追求する姿勢が光ります。
その創造の背景には、素材との対話、技法の探求、そして自身の内面との向き合いがあるのでしょう。
光と影、熱と冷却、偶然と意図が織りなす結晶のような作品を、ぜひ手に取ってご覧ください。
「熊谷峻 境田亜希 展」
日程
2月22日(土)ー 3月2日(日)
時間 13:00〜17:00
会期中店休日 2/26(水)
在廊日 23(日)
福岡県宮若市原田1693
0949-36-4092
福岡からは遠く離れた地、秋田で暮らしながら制作しています。
冬の長さは体感的には12月から3月くらいまでの約4ヶ月間。
今は薄暗く、白と灰色のぼんやりとした曖味な色調に覆われた風景を眺めながら日々手を動かしています。
そのような中で、ふと硝子に留まった光や色彩を見るとき、地の底の土や身体を巡る血のようなあたたかさを感じることがあります。
共に異なる作風ですが、同じ空間の中から生まれる作品にはうっすらと目を細めると視点が合う様な淡い共通点があるように感じています。
二度目のうつしきでの展示、福岡の皆様ともこのあたたかさを共感できましたら幸いです。是非お越しください。
熊谷峻・境田亜希
取材映像
1983 秋田県生まれ
2007 秋田公立美術工芸短期大学工芸美術学科専攻科 修了
2009-2011 秋田公立美術工芸短期大学 教務補助
2012-2015 富山ガラス工房 所属作家
2017-2020 秋田市新家ガラス工房 所属作家
2020- 秋田市のアトリエにて製作活動
型やガラス、流し込む物質によって現れる造形物は異なり、意図的に異素材を溶け込ませ
完成後のガラスの表情の個性を大切にしている
1982 秋田県秋田市生まれ
2012 秋田公立美術工芸短期大学研究科 修了
2012 富山へ制作拠点を移す
2017 富山ガラス工房 退社
2017 秋田市へ制作拠点を移す
今日、明日、明後日と、繰り返す制作の中で
柔らかで捉えどころのないガラスの微細な変化を通し、自身の「心と身体を知る」感覚を愉しんでいる
暦は立春を迎え、川の魚や山の野鳥が歓喜しているように感じます。
自然の景色に元気をもらいながら、皆さまと和やかな時間が過ごせますよう愉しみにお待ちしております。