うつしき

うつしき

無意識と潜在意識の深奥へ

昨年から、習慣のひとつひとつを見直し始め、そこから思考の癖と向き合うために無意識について勉強している。今日はそのことについて書いてみようと思う。

 

無意識とは何か、潜在意識とは何か。この問いを真正面から考えようとすると、いつも奇妙な迷宮に迷い込んでしまう。意識というものは、あたかも「私」のもののようでいて、その実、私の背後で何者かが糸を引いているような気配がある。フロイトが「無意識」を提示し、ユングが「集合的無意識」を説いたのは、まさにこの「意識の不確かさ」を掘り下げるためだった。

 

氷山の一角という比喩がよく使われるように、私たちが「見て」「聞いて」「考えている」と思っている意識など、心の構造のごく表層にすぎない。深層には、過去の記憶や経験、あるいは社会や文化が埋め込んだ観念が沈殿し、さらには私たち自身も気づかぬ何かが脈動している。これこそが潜在意識の正体であり、私たちの人生を根底で操縦している“見えない副船長”なのだ。

 

たとえば、あなたは大海原を進む宇宙船のキャプテンだとしよう。しかし、その操縦桿を握っているのは、あなたではなく、長年の経験と記憶を頼りに勝手なルートを決める副船長である。あなたが「こっちへ行くぞ!」と宣言しても、副船長は「いや、そちらは危険です」と独断で舵を切り直す。これはまさに、意識と潜在意識の関係を象徴する図式である。つまり、人間は意識しているつもりで、じつは無意識に操られているのだ。

 

この副船長をどう説得するか? その答えは「思考の習慣」を変えることにある。毎日の思考の質を変えれば、潜在意識のプログラムを書き換えることができる。たとえば、毎朝「今日も良い一日だ」と言葉にする。最初は空疎なアファメーションに思えるかもしれない。しかし、何週間も続けていると、潜在意識が「なるほど、人生は良いものなのだな」と認識するようになり、気づけば舵を“良い方向”へと切るようになる。

 

こうした潜在意識の働きを、映画というフィクション装置が巧みに描き出すことがある。たとえば、クリストファー・ノーランの映画『インセプション』は、まさに潜在意識の構造をテーマにした作品だ。夢の階層が深まるにつれて無意識の領域に近づき、現実と幻想の境界が曖昧になる。これはフロイトの「意識・前意識・無意識」のモデルとも重なるが、それだけでなく、ユングの「アニマ/アニムス」の概念にも通じている。

 

たとえば、ディカプリオ演じるドム・コブが、亡き妻モルの影から逃れられないのは、彼の潜在意識に「抑圧された観念」が刻まれているからだ。ユングの理論で言えば、モルは彼の無意識に宿るアニマであり、潜在意識が作り出した“幻想の亡霊”なのだ。そして、映画の最後に提示されるトーテム(独楽)が倒れるかどうか不明なまま終わるのは、「現実とは、果たして私たちの意識で決定できるものなのか?」という根源的な問いを突きつけているからにほかならない。

 

また、『マトリックス』は、さらに哲学的な視点から潜在意識にアプローチする。映画の中で人々は「本物の現実」だと信じている世界が、じつはコンピューターによる仮想現実(シミュレーション)であった。これは、「私たちの現実もまた、社会や文化が植え付けた潜在意識のプログラムに過ぎないのではないか?」という発想と直結している。ネオが赤い薬を選ぶシーンは、まさに「潜在意識の書き換え」に挑む決断を象徴しているのだ。

 

そして、『スター・ウォーズ』における「フォース」という概念も、潜在意識との関連が深い。ジェダイはフォースを通じて宇宙のエネルギーを感じ、直感や未来予知を可能にする。しかし、フォースには「光」と「闇」の二面性があり、その扱い方次第でジェダイにもシスにもなり得る。これは、ユングの「シャドウ(無意識に抑圧された負の側面)」の概念と響き合う。人間の心の奥底にある「恐れ」や「怒り」に飲み込まれれば、それがそのままダークサイドへと転じてしまうのだ。

 

さて、ここで一つの疑問が浮かぶ。なぜ人間は、放っておくとネガティブな方向へ流れやすいのか? それは、心というものが、雑草の生い茂る庭のような性質を持っているからだ。ポジティブな思考は意識的に植え付けなければならないが、ネガティブな思考は何もしなくても勝手に育ってしまう。

 

これは宇宙の秩序とも関係している。物理学において「エントロピー増大の法則」が示すように、あらゆるものは放置すると無秩序に向かう。部屋が勝手に片付かないのと同じで、私たちの思考も放っておけば乱雑になる。だからこそ、「心の掃除」が必要なのだ。毎日少しずつ、不要な思考を捨て、清々しい思考を取り入れることが、潜在意識の航路を整える鍵となる。

 

実際、ある哲学者は「人間の心は吸い込んだ空気と同じようになる」と述べた。常に暗いニュースや不安な話ばかりを吸い込んでいると、潜在意識はそれを「現実」として認識し、ますますその方向へ舵を切る。一方で、美しい音楽や詩を吸い込んでいれば、それが新たな現実を創ることになる。

 

結局のところ、私たちの人生は「意識的に考えていること」よりも「潜在意識に刻まれていること」によって形作られる。そして、その潜在意識の書き換えは、決して一瞬でできるものではない。意識的な選択の積み重ねが、やがて潜在意識の習慣へと変わる。ならば、どうせなら自分の意志で航路を定め、副船長を教育し、人生という大海を自由に航行していきたい。

 

熊谷峻・境田亜希展にお越し頂いたみなさまありがとうございました。

素晴らしい作品に囲まれる最高な時間となりました。

お二人にはまた二年後の2027年に展示をお願いしているので、その時を愉しみにしていてくださいね。

今月は久しぶりに海外への取材&仕入れ旅として、タイ、カンボジア、ベトナムに行ってきますよ。

うつしきでも諸々と企画を考えていますので、どうぞお楽しみに。

今日も長文を読んでくださったみなさまありがとうございます。

潜在意識の力をうまく利用して、それぞれの理想の人生を築いていきましょう。

では、今週もラブリーでハッピーな週の始まりを♡

 

 yasuhide ono