うつしき

うつしき

物言う装身具

日毎に暑さを感じる季節。
靴下なんてぽいっと脱いで裸足ですごしたくなります。
今回はHender Schemeの夏秋のkinoneと名付けられた履物のご紹介です。

うっすらと指跡をかたどられたソールは素足で履くと気持ちよくなじみます。
木の根よりインスピレーションを受けたデザインで、
バンド部分は手編みと機械編みを混合し
しっかりと均一に編むことで浮かび上がる編み目が美しいサンダル。
ポリエステル素材により表面の凹凸を光が掬い上げ、
編むという古来からの技法でありながらモダンな雰囲気を纏っています。
異なる編みのデザインが交差し惹きこまれるようにはじまりを辿りたくなります。
その先はミッドソールへとつづき、整然と並ぶ結び目へと着地して、
どっしりと根をおろすような安定感のあるソールが土台となっています。
どこか物語を彷彿とさせるような、
履物という常に地に接するものであるにも拘らず、
手に取ってどの角度からも眺めたくなる一足です。


編みの歴史を辿ると旧石器時代にまで遡り、
世界で見ると発見された最初期の編み細工は一本の連続した糸を編んで作った網であったそう。
やがて藁・竹、植物を材料に糸や紐にする技術が発展して様々な素材で生活道具を作るようになりました。
結びの歴史はもっと古く、遠く原始時代にも遡るとも言われています。
人が生活していくために動物の革、木のつる等を用いて道具や住居の建築、衣類にも用いられました。

近代の日本でみると、稲作によって余った藁を
次々と暮らしの道具へと編み変えていきました。
日常着として着物を纏っていた頃には
布のあわせに幾度も結びを重ね、結ぶことは日々に欠かせない行為でした。
大切なものを包むのにもしっかりと編まれた組紐で封をして結びます。
時には知る者でしか決してほどけない結び目を施し、中のものを守る役割もあったそうです。
編み目に自然物や景色を移しこんだり、家紋のような役割を持っていたり、
編みや結びは言葉を持たずともそこに言伝を潜ませた役割をも持っているように思います。

うつしきには、ボスであるyasuhide ono のアクセサリーが並んでいます。
活動初期より作り続けるマクラメ編みを施した作品は、
今も尚彼の代表作として日々新たなデザインが生み出されています。
途方もない幾通りもの掛け合わせの編みと結びから成る装身具。
店頭に在るあいだはうつしきを、誰かの手に渡るとその方を守ってくれているような存在に感じます。

そんなことを想いながら結び編まれた装身具を身に着けると心強くなります。

おすすめの併せ

COSMIC WONDERの凛とした気配を持つドレス。
背筋がすっと伸びるような衣にあわせ、
地にしっかりと足を付け悠然と振舞いたくなる装い。