うつしき

春に倣う

今年の桜はなんとなくいつもと違う気がする
いつもは桜よりも梅や桃に気持ちが向かい、
また咲ききった姿より蕾や綻ぶ状態を好み
王道から少し離れたところが
心地よく思う節がある
それなのになぜか今年はとても気になる
いつも通勤につかう山道にぽつぽつと
植えられた桜、例年なら十日間くらいで
散ってしまうのに、
枝にしがみついて必死に落ちるのを
耐えているようにも見える
あたたかな春の光が照らす はなのみち が
あんまりにきれいで心を動かされるからか
朝のこの景色に背中を押してもらっています
 
花への感じ方は少なからず今自分が持っている感情の膜を通して変わると思う
心が朗らかな時、
花が共に祝ってくれているような気がしたり、
不安定な時には慰めてくれるように見えたり
そんな存在に気持ちを癒してもらうこともある
見え方、感じ方はその瞬間に
その人の持つ状態でしか
得られないもの人と人とが直接会うのが難しい今、
オンラインという方法で
ものを介して交流できることを
とても有難く感じる毎日です
依頼してくれる方がいて、
郵便屋さんや宅配業者さんがリレーのように
繋いでくれるから実現できること
 
毎日変わる情勢の中、いつもと変わらず成長をとめることのないうつしきの植物たち
太陽と土と水とを栄養にして
地道に日々を育んでいる
古文に垣間見る、昔の人が顔を合わせることのできない相手へ思いを託し
手紙に植物を添えたのに倣って、
私も細やかに手紙に添えています
いつか会える日を願い、
うつしきの環境を身体に含んだ植物たちを
皆さんの元へ
選んでいただいたものと共に少しでも
うつしきの気配を
受け取ってもらえたら嬉しいです
 
遂に桜の花びらも木に残るはわずかとなり、
これから青々と緑が茂ってゆくでしょう
わたしたちも光を浴び、
風を受けて植物たちと同じように健やかに
過ごしていけたらと思います
 
小西紗生