佐々木雄一さんの革作品の工程は、染色のされていない1枚のヌメ革を雨水に晒すことから始まります。
“好きなものを作りたい”
どの活動に対してもその根幹にあるのは、細部に至るまで “好きなもの” への一途さ。
これまでの軌跡を辿ったインタビュー前編に続き、後編では制作過程についてのお話です。
「全く染色のされていないきれいな状態のヌメ革は、好きじゃないんです」。
作品を作る上で大事になっていく素材。既存にあるものをただ受け入れるのではなく、いかに自分好みの表情や形に仕上げていくかの実験を繰り返していると話す佐々木さん。
好きじゃないものを、どうやって好きな状態にしていくのかが大事ともいいます。
「ヌメ革は元々は個体差があるものなのに、きれいな状態のものは、個性が消されたように感じていて。それが良いのかと言われるとわからないんですけど、作り始める前にヌメ革を雨水に晒して揉みます。乾燥させ、切り出して仕立て、一つずつ柿渋をメインに染め、仕上げにオイルを塗って作りあげていきます」。
試行錯誤を繰り返しながら素材を探求していくのは、好きなものを作りたいという理想を佐々木さんが強く持っているからです。
作り続けることで知識や技術があがっていく中、作為的な要素をどんどん消していきたいといいます。
「こういう風に作ろうと臨むと、作為的なものができたなと思ってがっかりすることが多いんです。技術が上がるといろんな事やってみたくなり、作ろうと思うものは凝っていきやすくなりがちです。作為的な要素はできる限り減らして、自然の中で偶然生まれた表情になるように心がけています」。
4月17日(土)より開催している 『いびつ店主 佐々木雄一 展』。
佐々木雄一として初めてとなる展示として沢山の準備を重ねてきたと想像に難くありません。160点程の作品はその熱量を物語るよう。
作品は用途という実用性とは別に、ただそこに在ることに意味を持つ美しさが備わっています。
展示期間は4月25日(日)まで。この場所にしかない景色をぜひ体感して頂きたいです。
今回の対話を終えて佐々木さんの革作品を初めて見た時に、どのようにして味わい深い表情ができあがるのか気になっていました。効率性ではなく、ひたすら自分が好きなものを追求するものづくりの姿勢。その裏には理想に向けて、着実な一歩を重ねる背景があったのです。どの作品群も繊細な手間ひまと、自然の中で偶然生まれた革や染めの表情が映しこまれております。遠方で来れない方は、オンラインでも作品を公開しておりますので、この機会にぜひご覧ください。
聞き手・文 : 小野 義明
いびつ店主 佐々木雄一 展
日程
2021年4月17日(土) – 4月25日(日)
期間中休みなし
時間
13:00-18:00