4月も下旬へと突入しました。
今月もたくさんの景色を見せていただいています。
うつしきで今月末から始まる市川孝さんの展示に合わせて、滋賀県の工房を訪ねました。
二年前にも取材で訪れたことがあり、今回で二度目の訪問です。
市川さんには、陶芸家と茶人の二つの顔があります。
前回の取材では陶芸家としての側面について取材を進めたので、今回の取材では茶人としての市川さんについて取材を進めることに。
「茶車」といえば、市川さんと言っても過言ではないくらい、茶車を引っ張って全国各地で茶会を積極的に開催されています。
初めて取材に伺った二年前。市川さんに淹れていただいた台湾茶を呑んだ日の経験は今でも覚えています。ギコギコと音を鳴らしながら森へと茶車を走らせる姿。男心をくすぶる茶車のフォルムや質感。そして静けさの中から聞こえてくるお茶の雫が跳ねる音。鳥のさえずりや風の音と相まり、それは今まで感じたことのない贅沢な時間でした。
再び、取材で訪れたのは4月の初めごろ。木蓮の花が満開の時期でした。
今回の取材では色々なお茶を市川さんには入れていただきました。自分の中で特に印象に残っているお茶は目の前に満開咲く「木蓮」のお茶。「そういえば、木蓮の香りや味って知らないなぁ」とか「そもそも木蓮に味なんてあるの?」とか考えていたことは一瞬で覆りました。口にしたそれは病みつきになるくらい美味しくて驚きます。木蓮の花をお湯で浸すだけでうつくしい淡い黄色いお茶ができるんです。もっと早く知っていれば、うつしきに毎年咲く木蓮で何杯お茶が作れただろうか…知らないことは勿体ねぇなとつくづく思うのです。木蓮を堪能した後は味変で桜を入れると、もう春の味はお腹いっぱい、これまた贅沢な時間に。
先ほども少し記しましたが、市川さんは茶車を引っ張り茶会を開かれています。
市川さん自ら茶車を作っているのですが、機動性や利便性に関してはそこまで高いものではありません。
しかし、それ以上に自然の景色との相性、調和性は非常に高く、市川さんの茶会から感じる唯一無二の空気感、雰囲気は茶車があってこそだと思い知らされます。
いくらでも便利にはすることはできるけれど、あえてそれをしない市川さんの拘り。
ついつい、便利や効率に走りがちな今の時代。その逆に大事なことが隠れていたりするのかもしれません。
たかが、お茶、されどお茶です。
市川さんが作り上げる景色の中でいただく茶会では毎度、気づきを与えてくれます。
ただ、気づくだけでは何も変わらない。気づきを生かすも殺すも自分次第。気づきを自分の中で深める作業が実は大事で、自分でお茶を入れてみたり、野草でお茶を作ってみたり、自分好みの調合を探してみたり。それこそが学びであり、その時間が生きる上で尊い時間だと思います。
4/29(金)から始まる市川孝 作品展の初日は市川さんによる茶会を行う予定です。
詳細は近日公開されますので、ぜひこれを機会に市川さんの世界を堪能されてはいかがでしょうか。
どうか、お楽しみに○
小田 雄大