うつしきの庭

はじめましてスタッフの小西です。
ちょうど去年の今頃うつしきに仲間入りし
新たな出逢いと刺激を一杯に戴き感謝の一年目を過ごしました。
私が知らないうつしきの時間を、訪れる方々を通して受け取らせていただくこともありました。
新年がはじまり気持ちも新たに、皆様との大切な時の層を重ねていけたらと思います。

うつしきでは主に庭を担当しています。
以前は花屋に十年ほど勤めていて、植物と共に過ごす毎日を送っていました。

初めて訪れる方にはうつしきの在処が少しわかりづらいかも知れませんが、
入口の目印を見つけて足を踏み入れるとまず庭がお迎えします。
季節が巡る度、その日のお天気や湿度でも、
私たちが肌に触れるものと同じものを植物も感じて
刻々と変化しています。

私が植物に興味を持ったきっかけは高校生の頃。
古典の教科書に載っていたとても短い一章が印象的でずっと心に棲みついています。
それは平安時代の女流作家の日記の中から「移ろいたる菊」と題された一章でした。
以下要約です。
 
彼女はとても魅力的な女性で
ある男に強く求愛されていた。
ずっと相手にせずそっぽを向いていたけれど
ずいぶん経ってようやく彼を受け入れる。
すると急に男は若い女に心変わり。
そんな男に向けて一通の手紙を送ります。
朽ちる途中の時が移ろいたる菊を一輪添えて。
その菊に込めた想いは
心が移ろう彼を表すと同時に、
その時代もっとも高貴で美しいとされていた
新鮮さから時が移ろった状態の菊を自分にも見立てた。

当時の想いを伝える表現の術と、
たった一輪の植物の、人の想像力と感じ方で形作られる存在感に強く心惹かれました。
美しいとか香りが良いとかそれだけではないもっと深いものが潜んでいるような気がして。

朽ちて落ちたキク科のダリア。
花屋では一番きれいとされる花が咲くまでの状態しか並ばないことがほとんど。
例えばチューリップに種が出来ることも
実際に育ててじっと見守って試してみないと分からなかったこと。
うつしきには様々な土地で誰かと時間を過ごしてきたものが多く集まっています。
庭の植物たちも、現在の家主よりずっと前から居る者もいて、
知らない時間を蓄えて、今は私たちと共に過ごしています。
そんな古いものと新たに種まくものとが混在した
うつしきの庭の植物たちのことを中心に記していきたいと思います。
ギャラリーや喫茶室に向かう途中
少し足を止めて庭を見渡すと
その瞬間でしか見ることのできない景色が在ります。
訪れる毎に目につく植物もその時々で変化するかもしれません。
そんな楽しみも味わっていただけますように。
 
小西紗生