うつしき

うつしき

土から生まれるもの

うつしきでは先日まで陶芸家 清水志郎さんの展示を開催していました。
成形した器を焼く窯まで藁で作った土台に土を重ねて制作され、長時間かけて焼いた土器。
土と戯れているような気配を孕んだ作品は、どこか愛嬌があって
研ぎ澄まされた中にこちらに話しかけてくれる人格みたいなものが伝わってきます。

土に種が落ち水分を含み根を伸ばし、いつしか芽が顔を出す。
よくよく考えてみると衣服の原料となるものは植物が多くを占めています。

そこには水と太陽とその他多くの要素が加わって育まれていくのですが、
文字通り土台となる土あっての出来事だと気付かされます。

入道雲が空いっぱいに広がり夏本番。
衣服の時系列は早くも秋へと向かっています。
COSMIC WONDERの秋冬の意匠は美しい泥染めを中心とした多彩なデザインの衣服。
奄美大島の伝統的な泥染めを施された Earth soil。
泥染めにテーチと呼ばれる車輪梅を合わせた深紅を思わせる Wild rose soil。
植物の名の通り、車輪梅のみで染めると柔らかな紅梅色。
泥染と合わせるとはっとするほど惹きこまれる赤に。
普段赤に縁遠い方もなんだか纏ってみたくなる魅力を持っています。

泥染
奄美大島の伝統工芸の染色。奄美に自生するテーチ木(車輪梅)を煮出した染料と、泥田の泥
で染める。泥は奄美大島の 150 万年前の古代地層による鉄分豊富な泥田の泥。テーチ(車輪
梅)染めした後に、泥田で泥染、泥を落とす川濯き、テーチ染、泥田で泥染め、川濯きと作業
を繰り返す。泥染めは大自然の恵みと長年培われた技法と時間を要する貴重な染。

テーチ染
奄美に自生するテーチ木(車輪梅)を煮出した染料で手仕事により染めを繰り返ししている。
染料を煮出す火力は、煮出した後のテーチ木を使い循環。

 

当たり前のように泥染めと認識していますが、泥に浸して染めるって思い切ったなあと現代の感覚だと思います。
以前聞いた話で、そもそものきっかけを知った時には膝を打ちました。
江戸時代に奄美大島の特産品である大島紬を年貢として納めるよう要求され、
逃れるために田んぼの中に隠し、後日引き上げてみたら美しい色に染まっていたという逸話。
何かが生まれるときの出来事や組み合わせで起こった現象の根底を知ると、ものの見方が深まりより愛着がわいてきます。

土から生まれた植物に多くの手数を施され糸になって織られ布地となっていく。
そしてまた土に還るように泥の中で染められた衣服。

成り立ちを辿ると、より形どられた存在が生き生きと輝いて見えてきます。
今店頭にはCOSMIC WONDERの泥染めの衣服と、志郎さんの採取した土で作られた器とが共存しています。
中にはうつしきで採った土で作ってもらった器も!
同じ素材から生まれる、日々を彩るまったく異なる表現をあわせて愉しんでいただけたらと思います。

夏の陽射しの元、今すぐに纏える半袖のラップドレス。
斜めに入った袖のラインが美しいシルエットを作ります。
心弾み光を浴びて外に出かけていきたくなる一着。