何者かになりたいと思っていた20代。
何か身に付けなければ、何か出来なければと
色んな職に就いたり旅をしたり、心が落ち着いていなかった日々を過ごしていた。
どこかに納得する様な答えがあると思っていた。
そして暮らすように旅を始めて行き着いたインド。
偶然にたどり着いたインド最北端にある村で淡々と営まれる生活。
水を汲み、薪で調理し、牛を育て、祈り、家族と過ごす。
映画のようなワンシーンを実際に目の当たりにした衝撃は、非日常にいたインドで、暮らしの中にある日常の大事さを感じた。
今でも鮮明に覚えているあの日のあの景色をまた見たくて、その感動の余波が自分を突き動かしている。
その景色をみせてくれたインドとも10年目になる。
そこで感じた景色、想い、感情を少しでも料理の中で表現する。
遠回りして辿り着いた様に思えたけど、これまでの点と点が無ければ辿り着けない。
色んな事がベストなタイミングで訪れてるのだな、と感じれる様になった。
スパイスを扱うようになって改めて腑に落ちたことは、スパイスは全て植物から出来ている事。
野菜と同様、旬によって香りは変化する。
仕入れる時で違いがあり、そしてインド各地方ではスパイスの種類、使い方も千差万別。
広大なインドでは一つのレシピを例にしても宗教間、民族間で味は変わり、定義つけることは難しく、
決めつけない事が答えのように思う。
その決めつけない答えを探す日々は今世で学び終える事は出来ない。
それが今の自分の答えだ、と書きながら腑に落ちた。
だからこそ何者かになろうとせず、学び続ける事の大事さを感じている。
知識を深めるのはもちろん大切で、それぞれのスピードで、時には立ち止まることも、気付きを得るきっかけになると思う。
焦らずにそれぞれの気持ち良いペースで継続して学び続けること。
今回学びの場では知識や調理法ももちろんですが、僕が日々手を動かした時に感じていることを伝えるように意識した。
レシピも大事だけど、五感を使ってよく観察して調理する。
そうすると毎回違いに気づく。
漂う香りが、混ぜる時に伝わる感触、変化する食材の色、、
どんどん変化している、と感じる。
今回のうつしきのテーマでもある「うつろい」を意識して固執するのではなく
変化を楽しむように料理をする事が大事。
どうすれば美味しくなるのかに意識してしまいがちだけど、
美味しいとはその過程にあるギフトで、五感と心が偶然と重なり合った様な物だと思います。
その時の身体の状態、心の在り方でその答えは違うし、それで良いと思う。
学ぶ事がその人に与える影響は計り知れない。
思考が変わり行動が変化していく。
僕もその恩恵を感じている一人だ。
そして伝えることで学ばさせてもらう事が沢山ありました。
参加して下さった皆さん、支えてくれたみんな。
本当にありがとうございました。