うつしき

うつしき

うつろい

9月にうつしきの喫茶の一角をお借りして写真展を開催させていただくにあたり、
今回、それぞれ和歌山、京都、長野に拠点を置く3組の家族を訪れ、暮らしやものづくりの様子を撮影してきました。

開拓した山頂に暮らす川井家


自然布で衣服をつくる佐藤家


森で生活しながら籠を編む㓛刀家。

彼らの暮らしは、自然の景色がうつろう様子と重なります。

「うつろい」はある瞬間の点と点を結び、「線」になってはじめて感じるものだと思います。
この「うつろい」を撮影しようとしても、もちろん写真に写るのは今現在の瞬間、「点」のみです。
また、今回の写真は2022年7月24日から8月5日の夏季に撮影しており、四季のうつろいもありません。

裏を返せば、写真はどこまでも「今」をうつします。「今」の人々、景色、住まい、気候、ものづくり、作品。
その無数にある「点」に目を向けることこそが、うつろいを感じる一歩であり、今を生きるということだと思うのです。

彼らの暮らしは、「点」の存在を強く意識させます。
山で採れた土や植物を使った絵画や装身具、伐採した木の樹皮と竹で仕立てる籠。自然由来の素材は、まったく同じものは二度と現れません。
作品づくりに限らず、養蜂や稲作に挑戦したり、動物と生活したり、村の人から教えてもらった方法で棕櫚(シュロ)縄を編んだりと、生活の中で実践することも日々増え、変化します。
その時に自分が感じていることに目を向け、作品や暮らしで表現しているからこそ、今の彼らは今しか見られません。

冬の枯れ枝は春になると芽吹き、新緑へ姿を変えるように。
うつろいゆく彼らの「今」は美しい。

気が付けば、8月も中旬に差し掛かり、展示の準備で一日が終える日々です。

現像とスキャニングを終えて、ほっとしていますが、まだまだやることは山のようにある。

呼吸を整えて着実に手を動かしていきます。

どうか、お楽しみに〇

小田