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Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章

yasuhide ono

yasuhide ono

Jewelry designer / utusiki owner
Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章

この本を読むことは、私たちが人間として考えてきた根本的な問いへの再起動である。

 

「人間とは本来、善なのか、悪なのか」。哲学者、宗教家、政治家、科学者が幾世代にもわたり格闘してきたこの古くて新しい命題に、オランダの誠実歴史家ルドガー・ブレグマンは、豊潤な知性と透徹した調査精神をもって立ち向かった。

 

本書は、無意識希望的観測や表層的なヒューマニズムを語るものではない。 人類の起源から現代のメディア環境まで、心理学、進化論、人類学、社会思想を横断しながら、人間観の深部に根ざす「性悪説」の神話をひとつずつ剥ぎ取っていく。

 

ホッブズの「万人の万人に対する取り組み」、ダーウィンの自然淘汰、ドーキンの利己的な遺伝子、アダム・スミスのホモ・エコノミクス──これらが危うくて現代社会を“性悪説”ベースに設計させ、知覚不信、相互監視、利害対立による選択モデルを当然視させてきたか。

 

印象的なのは、彼の話が一時独善的ではないことだ。
例えば、ニュースを「現代における最も強力な依存性薬物それ」と例えられるくだり。

 

「ニュースはメンタルヘルスに危険を及ぼす」 
「ニュースを見るには、私たちの理性が足りない」
「心大切なニュースとは、身体にとっての砂糖に優しい」

 

現代人の心をじっくり考えた不安、怒り、無力感、そして「誰も自分のことしか考えていない」という諦め。 それは、これから「現実」なのだろうか?

 

ブレグマンはそこに鋭いメスを入れ、さらなる挑戦を突きつける。

 

「人間の本性についての否定的な見方こそ、多元的無知の最たる形ではないか?」

 

誰もが「そう思っているに違いない」と信じ込み、行動する。 結果、誰もが「信頼なき世界」を生きることになる。 まるで、裸の王様を褒め称える群衆のように。

 

それなら、「最悪」を前提に社会を構築することに、将来はあるのか?

 

本書は、ただの「世界」への優しい回避ではない。 それは、複雑化、断絶深く現代社会に関して、倫理的でまともな「信頼のデザイン」を取り戻すための設計図である。

 

私たちがこの本を「人間の場合」として手渡せるなら、未来へのまなざしは、今とは違う風景を考えよう。

yasuhide ono

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