うつしき

うつしき

手から伝う

稀にみる大寒波で福岡では珍しく雪が降り積もりました。
みなさんのお住いの地域は無事でしたか?
今年は偶然にも新月と共に旧正月を迎え、より気持ち新たな一年のはじまりとなりました。

近頃の私は久しぶりに糸紡ぎに没頭しています。
雪のように真っ白な羊毛が手を伝って生まれていく糸。

指の腹の感覚で調整しながら、ほんの些細な変化が自分の身体を使って出来ることに感動してしまう。
無論力不足で勉強の余地が大いにあるのですが、
それでも手という道具が自身の一部にあるということに改めて感謝を想います。

そういえば幼い頃から何かを作る手元を見るのが大好きだった。
デパートでお菓子を作る職人さんの前から離れられなくなってじっと見入っていたり、
裁縫や、組紐を編むのだったり竹細工だったり農作業や絵や字なんかも。
ジャンルは問わず何かに精通した方が独自のリズムで手が動き形がうまれていくのは
何とも言えず魔法のようでひきこまれてしまう。

今は作業部屋が別になり見られなくなってしまったけれど、
小野さんがアクセサリーを作る様子もまた美しく、
以前はじっと見たいのをこらえつつ過ごしていました。

茶道を習っていた時に先生がよくお点前の動きにあわせながら゛水が流れるように゛と言葉を添えてくれていました。
それを聞くと不思議と無駄な動きを控え只次の所作へと向かうことに意識がいく。
実際先生の滔々と流れる動きの美しいこと。
最終的に手から生み出されているけれど、それは全身を巡りさまざまな信号を出し合いながら手へと伝い、
どの感覚もかけがえのない要素だと気づかされます。

先日全盲の方が料理を作る様子を映像越しに見ました。
彼は光も感じられない中大切な人のために日々のごはんを作る。
玉子焼きは焼き加減が見えないから熱々に熱されたのを指で確認しながら巻く。
お味噌汁にいれるお豆腐は指の関節をものさしに均等に包丁で切る。
味噌は手づかみで量を確かめながら。
手が温度計であり、定規であり、計量スプーンの役割をする。
たったのワンシーンでの出来事なので、
きっと日々の中でものすごく多様な役割を担っているんだろうと想像に容易い。

普段ないないと不足に目が行きがちですが、今すでに持っている自身の要素に敬意が湧いてきます。
持っているものを目一杯使って、日々を豊かにしていきたい。

うつしきでは今年も様々な作り手のご紹介を予定しています。
2月には初めての展示となるガラス作家 熊谷峻さん、境田亜希さんの展。
お二方の手から生み出される世界、今から愉しみにしていてくださいね。

小西 紗生