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あるがまま を綴る

あるがまま を綴る

毎年冬になると父が着ている炭色のセーター。

飽きの来ない表情の凹凸だけで成る素朴な編み模様と、
襟ぐりのところのなだらかな線もなんてきれいなんだろう。

糸紡ぎや編み物をはじめた頃だったからか、そのセーターは私の心を離さない魅力的なものと映った。

あまりに似合っていてどこのかと聞いてみると祖母が編んだものだった。

そのセーターはそれからも毎年季節が廻ると登場し、年を重ねてもやっぱりいいなあと惚れ惚れする。

祖母は私が小学校に上がる頃に他界したのでもう30年以上も前に編まれたものだ。

聞くと毛玉をとったり少しの手入れはしているようだが、
流行遅れとかくたびれて貧相な様子とかそんなことは感じられない。

年月をかけ柔らかな風合いに変化しながらもしっかりと編まれていて、
安心して身体を預けられるお守りのようなもの。

MITTANの存在を想うとき私はこのセーターのことが思い浮かぶ。

先日うつしきで開催の展ではたくさんの衣が並ぶ中、
一番の見せ場にMITTANの修繕を施された衣が誇らしげに鎮座していました。

素材の吟味から心行き渡るMITTANの衣服は、推敲を重ねるように洗練された表現を追求し生まれた意匠。

素材においても、デザインに置いても一過性のものでなく
長い年月をかけて幾度も幾度も着て洗ってを繰り返し、かけがえのない多くの時間を過ごしたくなるもの。

その分ほつれや引きつれ、色褪せが出るのは避けがたい。

気に入りのものほど大切にここぞという時の出番の為に仕舞いがちになりそうですが、
MITTANは何があっても大丈夫と思わせてくれる懐の深さを携えています。

作り手の三谷さんが在廊下さった際に、身に着けていた着込んで何度も洗濯を重ねた風合いのものを欲しい!

と言って下さる方が多いのも印象的でした。

5月になりうつしきの庭は植物たちが競うようにぐんぐん天を目がけて背丈を伸ばしています。

日々触れ合う中で彼らの成長の変化だとか、周りとの共生の様子がありありと姿に現れています。

本日まで開催の陶芸家 市川孝-空想民族展-では市川さんの手から生まれた道具と植物たちを集めて、瞑想茶会:市川さん、のの茶会:野草宙さん、摘み草花の会:つむぎさんによる催しをひらきました。

偶然にも皆それぞれにMITTANの衣服でうつしきでの時間をすごされていました。

ご自身の活動を火と土と水と植物とで起こす出来事と仰る市川さん。

身に着けるものとの関わりも地続きであるように思います。

安心感のある衣を纏うとあちこちに行き交いのびやかに枝葉を拡げる草木の中でも
軽やかに動けそうな気になってきます。

そんな衣と共に、外に飛び出し太陽の光をいっぱいに浴びてわくわくする方へ向かっていきましょう。

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