大切なものは奥にある
田上真理子

台所の出窓から射す西陽がほかほかと、部屋をオレンジ色に染めるこの頃。
窓の外には南天の赤い実が枝からこぼれ落ちそうなほど、こちらに「見て見て〜!」と主張しているみたいだ。
「いいよね、植物や自然界の生き物はなんの遠慮もなく、その命と存在を主張できるんだから。」
と、遠慮がちな人間(わたし)は思ってしまう…笑
自分が遠慮がちな人間だと気づいて以来、芋蔓式に変な価値観や思い込みがあったことがわかり
人間ってつくづく奥深くて、複雑な生き物だなと思います。

先週、うつしきでテーマになっていた「愛」。
「愛」を感じる時ってどんな時だろうと意識を向けたとき
ふいに浮かんだのが、息子が通っていた皮膚科の先生でした。
先生は、子どもに対してニコニコするわけじゃないし、大人にするような対応で
なんならニコリともしないし、薬を飲み忘れようものなら
「治す気あるの?」と、親のわたし達も叱られる。
けれども診察は、これでもかと言うほど患部に顔を近づけ、小さなルーペでじっくりと症状を診てくれている。
なにか植物や昆虫を観察でもするみたいに。
冷静に抑揚のない調子で
皮膚がどういう状況なのか
どういった治療をしていくのか
そして、普段の生活リズムから薬を飲む時間と飲み方や塗り方を細かく説明して、診察が終わるのですが…
なんとも言えない衝撃!
少なくとも、わたしと夫はこんな先生に出会ったことがなかったので、ちょっとした感動でもありました。
一見すると無愛想だし、威厳もあって怖いんですが
患者への向き合い方は、めちゃくちゃ「愛」を感じるんです。
時代は早さや効率を重視するけれど、この先生は真逆かもしれない。
早さや効率を重視したら、些細なことや見えない問題は、どうしても排除してしまうことになるもの。

物事の奥、人の表面ではなく内側
誰しも見逃してしまうような細かいことに目を向けることが「愛」だとしたら
遠慮がちな性格も、複雑に考えてしまう思考も「愛」が根底にあると思えたのでした。
どこかひとつの側面だけで判断せず、表面には見えない内側の層や側面を想像できる自分でありたいなと思います。
それから、何度かお世話になっている皮膚科の先生
診察の最後に白衣のポケットから飴を出して、息子に渡してくれる一面も素敵なのです!
今週も心に愛を♡
