響きあう十年、深まりゆく時間

yasuhide ono

うつしきの10周年を飾ってくれた居相展が、無事に幕を下ろしました。
展示のはじまりを彩ってくれたのはいろのみの演奏会。
音が建物の壁や床に染み渡り、空間が呼吸しているように感じた瞬間がありました。
ああ、建物自体が喜んでいるな、と。
十年という時間を支えてくれたこの場所に、音と衣と人の気配が重なっていく。
そこにはただの「展示」以上の祝祭があった気がします。
音の響きに身を委ねながら、この十年のことを思い返していました。
ここで出会った人や物、季節ごとに入れ替わっていった展示、繰り返し訪れてくれた人たち。
そのひとつひとつが重なり合い、今目の前に広がる場をかたちづくっている。
あらためて、この場所そのものが記憶を宿す存在なのだと実感しました。
物理学でもスピリチュアルの世界でも語られるように、すべての存在は周波数=波動でできている。
僕はこの考えにとても共感を覚えます。
物と物の調和、空間と人との関係、人と人との間に生まれる「肌感覚」もまた周波数の共鳴だと信じている。
量子力学の世界には「観測問題」と呼ばれる現象がある。
二重スリット実験では、観測していないときには量子は波として広がり干渉模様をつくり、観測すると粒子として振る舞うことが確認される。
つまり、観測という行為が量子の状態をひとつに確定させる。
この「観測によって現実が形を取る」という考え方は、僕にとって日々の営みや人との関係にもつながっている。
人も物も空間も、誰かの眼差しや意識が注がれることで形を帯び、存在感を持ち始めるのです。
たとえば、ある人の「らしさ」に導かれて物が集まってくること。
合う・合わないという直感。
そうしたものは、説明できないけれど確かに存在する周波数のやりとりなのだと思う。
ガンジーの有名な名言に「あなたがこの世で見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい」という言葉がある。
そして「思考は現実化する」という言葉の通り、人が何を信じ、どう在ろうとするかによって世界は少しずつ形を変えていく。
うつしきの十年もまた、そんな周波数の連なりの結果であるように思えるのです。
自分自身の身体や心を楽器のようにチューニングしていく。
今回の居相さんが滞在する中で心に残っていることの一つに、自分自身の純度を高く保ち続けるということがある。
制作し続ける中で、自身の中に生じる澱みのようなものを感じたら、一度制作を止め、散歩をしたり、気分転換をして違和感を取り除いていく。
日々の暮らしと制作が、心の底から一致していることを重要視していることが、居相という活動を輝かせているのだなと納得しました。
とにかく速さや効率、結果を求める思考優位なこの時代において、内と外の周波数が一致する稀有な姿勢といえるでしょう。
居相展が終わり、次の10月11日(土)より始まる平澤まりこ展までの束の間は、常設での営業に戻ります。
けれど、静けさに浸る間もなく、数日前には写真家・表萌々花による作品集の撮影があったり、昨日一昨日と居相の衣のオンライン用の撮影に、オーダー品の制作と、なんだかんだ目まぐるしい日々が続いています。
けれど、この「目まぐるしさ」さえもまた周波数の一部。
出会いも出来事も、響き合うもの同士が必然のように重なり合っていく。
日々の呼吸や生活のリズム、食卓で交わされる会話、庭先に吹く風。
そうした一見ささやかなことの中にも、確かに波動は宿っていて、場の空気を整え、人を呼び寄せる力になっている。
こうしてみると、暮らしそのものがひとつの共鳴装置のように思えてくる。
十年を越えて新しい十年へと歩みだすうつしきに、どんな音や光や人の気配が集まっていくのか。
今はただ、建物の奥深くに響いている余韻に耳を澄ましながら、その流れを受け止めていこうと思います。
居相の衣のオンラインでの掲載は9/30(火)18時から始まります。
カートが開くのは翌日10/1(水)18時からとなります。
遠方で足を運べなかったという方もこの機会に是非チェックしてみてくださいね。
では、一度きりの人生の中での一番若い今日という一日を、存分に満喫しちゃいましょう!
今週もハッピーラブレボリューションな始まりを♡