うつしき

うつしき

一日を摘む

年が明けて毎朝日の出を見るのが一日の愉しみになっている。
生まれたての目が眩みそうな力強さから、高く昇るといつのまにか主役ではなくなり見守るように光で包んでくれる。
一日のうちで存在しているのは同じなのにしなやかに役割を変えているかのように見える。

去年の終わり、うつしきでも展示を開催してもらった川井有紗さんが営むensでうつしき展が開かれ、
yasuhide ono の装身具をはじめうつしきメンバーもそれぞれの形で参加させてもらいました。
私は有紗さんのはじめてのアルバム「〇(えん)」発売記念の演奏会での植物装飾と贈り物の花束を担当。
普段うつしきから皆を送り出すことが多く、自らが外にでることが新鮮で緊張感がありながらも
有紗さんが委ねて下さったことがただただ嬉しくてなりませんでした。

このアルバムはBGMとしての心地よさも持ちつつ、
心を静めそこに身心を向けて音を手繰るように世界にに深く入り込みたくなる不思議な印象があります。
誰しもの根底にもある ゛生まれて生きて生きて死ぬ゛
その言葉が幾度と繰り返される。

妹の訃報を聞いた時、私は勤め先の花屋にいた。
真夜中、そろそろ仕事をおしまいにしようと呑気に帰り支度をして。
まだ20歳を過ぎたばかりであまりに突然だった。
目の前にいないから実感わかず、混乱した中にいろんなことがどっと溢れ
将来結婚をするとしたらお花はどんなにしようかなんて他愛のない話をしていたこと
そんなことはもうしてあげられないのかと思った途端
頭の中が真っ白でふわふわした状態のままひたすらに目の前の植物で彼女の為の花束をつくった。
終電もすぎ、かけつける術もなくできることはそれしかなかった。

音を聴きながら大切すぎて怖くて封をしてすっかり隅に追いやっていたそんな記憶を呼び出してもらいました。
頭でごちゃごちゃ考えることなくただ手が勝手に動くような夢中さ。
そんなことも同時に思い出させてもらいました。

植物をみていると
蕾として花を守っている部分は開いた後花を支えるガクとなり、
花を咲かせながらもその奥で実を育んでいる。
いつまにかまるっきり姿を変えて弾け種となりまた繰り返す。

生まれることも 生きることも 死ぬことも
終わりでもはじまりでもない、えんとなってぐるぐると巡っていく。

そんなことを思いながら植物たちを有紗さんのつくる世界に広げさせてもらいました。

映像の小田くんによるMVも現在制作中です。
その前に演奏会の映像でその時の気配をぜひ受け取ってください。
今、身心が向かうこと を大切にされている川井有紗さんの新たな音の表現。
たくさんの方に知ってもらいたい作り手です。

 

そしてうつしきは今年のはじまりの展 chikuni展へと向かっています。
chikuniさんのひとつひとつの作品はもちろん、
縁の深い太田美帆さんの演奏会での空間演出もぜひ味わってもらいたい。
美帆さんが繋げて下さる植物料理家きみえさんとの学びの場。
数珠を繋ぐように関わって下さる方との交わりがここでしか体験できないものとなるはずです。
対話や過去の映像で愉しみを膨らませていてくださいね。

扉の先に見える景色がいつだって心揺さぶられる世界でありますように。
今年もよろしくお願いします〇

 

小西 紗生