うつしき

うつしき

春のとある一日

午前中、うつしきの建物の中は
大きなカイズカの陰になり、ひんやりとしている。
この日は、一歩外に出ると春のあたたかな陽射しが降り注ぎ
ほんのり湿気を感じる空気が漂っていた。

そこに一台のトラックがやって来て、一定の間隔に砂利を滑らせて置いていく。
砂利の山を少しずつ平らに広げ、小野さんが喫茶室の入り口を整えているのが見える。

今日は、雨や車の往来で窪んでしまった敷地内の通路を整備する日だ。

保育園の進級式終わりで帰宅していた
小野家次男、次女の二人が小さなスコップとお砂場セットでお手伝いに入る。

年少のむっちゃんは、2つ上のあおばに
砂利をかけて遊んでいるだけでなかなか捗らないけれど
あおばは、むっちゃんに邪魔されつつも
父の言うとおりに作業をこなしていて頼もしい。

ひたすら泥付きの砂利を
窪んだ場所に運び、平らにならしていく。

正午近くなると、陽射しはより強くなり
顔が火照って来て、汗ばむようなお天気。

むっちゃんは、完全にお砂場遊びモード。
ちょうど春休み中の小学生と、ピカピカの中学一年生の
透花と創生が頼もしい助っ人になってくれた。

母かおりんは、
砂利の上を裸足で駆け回る自由奔放な末っ子おとちゃんと
いつの間にか水遊びを始めたむっちゃんにやれやれとなりながらも
思い通りにいかないことを手放し、こども達ひとりひとりを尊重していて
その姿勢から母として自分もそうできてるかなと、いつも問われる。

そしてこども達は
それぞれがのびのびとなんでも自分でできるようになっているから凄い。

そんな作業の後
『自然は手間をかけてあげたら
それ以上のものを与えてくれる』
という小野さんの言葉が印象的だった。

たしかに
通路が整備されただけで気持ちがいいし
作業をやりきった達成感や
身体を動かした後の爽快感はなかなか心地よいもの。

(その後みんなで頬張るご飯も美味しいよね~ )

この日がんばったみんなの、それぞれ大きさも色も違う長靴が
西陽で乾いてゆく姿さえ、とてつもなく愛おしくて
特別なものに見えてくる。

そう思うと
私達の日常って、当たり前のようで当たり前じゃないことで溢れている。
そして、それにどれだけ気付けるかを試されているようにも感じる。

ちょうど四月は
うつしきのお手伝いをさせていただくようになり、二年という節目。

いま、私にできる事は何だろう?と改めて問うと
こちらで受けた恩恵を何倍にもして、多くの方に返して行くことだと感じています。

 

 

会期後半となる『笑達川井有紗 夫婦展‘いろどり山’』でも
お二人がいろどり山の自然やその暮らしの中で受けた恩恵が絵画となり
見ている私達に様々な気づきを語りかけてくれています。

どうか多くの方に、ご覧いただけますように。

今週も佳き一週間を

たのうえまりこ