日常料理の背景

のせるみ

食の背景、と言うと
食材の生産過程や物語のことを想起しがちですが
食卓に並ぶ日常料理の背景は?と考えると、器を思い浮かべます。
20代前半のころ、心でおもう理想の器と出会えずに
なにかちがう…と思いながら、探しようもなく過ごした時間がありました。
それはもちろん好みだったり、素材感だったりするのですが、
自分がプロの料理人ではなく経験値も豊富でないからこそ、
背景となる器に力を借りたい・・・と、その必要性を感じていたのかもしれません。
ただ有りもので拵えたスープ、ただのお結び、ただの漬物、ただのポテトサラダ。
名もなき日常料理は背景に支えられて美しさを増し、
背景もまた、日常料理によってその存在が輝いている気さえします。
この器に、なにを盛ろうか?
そう考えるだけで、自然と心がにんまりするものです。
昨日まで開催していました河合和美展で旅立った器を想うと、
迎えた方の嬉しいお顔と、美しい食卓が、すぐに目に浮かびます。
会期中、かっこみ喫茶をしてくださった日常料理ふじわらの奈緒さんが
生み出した食卓も、まさにそんな掛け合わせの美しい景色でした。
機能や用途が被っていても、あたらしい器を手にしてしまうのは
「あたらしい背景」に出会ったときの喜びを知ってしまったから。
毎日の生活の中にある食事の瞬間の景色が美しいものであったら…
好奇心は尽きませんね。
こんな喜びに満ちた出会いは、ほんとうに、いいものです。
みなさん今日も、あたらしい景色をお迎えしてください◎