うつしき

うつしき

劫と刹那

COSMIC WONDER「うすはなそめ」展

ご覧いただいた皆さん、
ありがとうございました。

日が傾き、あわく染められた衣が
夕闇の準備をする光に照らされて、
またとない瞬きを放つ。
最後の最後まで心掴まれる展でした。

現かどうかの境目もあやふやで、
恐る恐る身を預けると夢心地に軽やかに。

子どもの頃に父から聞いて
大切に持っている話があって、
今展で並ぶ衣の中にいてふと思い出しました。

あるところに大きな岩がありました。
百年に一度天女が舞い降りて、
うすく透きとおる美しい羽衣で
その岩をひと撫でします。
びくともしない岩を何度も何度も繰り返し、
果てにはすり減って砂になる。
その時間を「劫」という。
それが幾度と重なっていつか永遠となる。

伝承される昔話のように時折きいていた
仏教における時間の単位の話。

その天女が纏う光のベールみたいな羽衣と、
目の前のすきとおる繊細な衣が
繋がるような気がしました。


COSMIC WONDERの意匠と、
遥か昔から途絶えずにと
受け継がれた染めとが交わり、
途方もない積み重ねを今この手に触れられる。
なんて尊いことだろう。

この景色もこれでおしまい。
あっというまに駆け抜ける、
その儚さも展示の醍醐味です。

すっかり消えて幻燈だったのかと思うけれど
映像と対話を振り返り、
ひとつの心動かされた出来事を
自身の引出しへ仕舞います。

[ インタビュー映像 ]

[ インタビュー記事 ]

お休みを挟み、
次に扉をひらくのは5月13日(木)より。
常設のうつしきもまた、
そのときだけに出逢える世界。
 
小西 紗生