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いろのふしぎ

いろのふしぎ

夏至を過ぎむしむし汗ばむ気候が続きます。

そんななか先日の大雨でどこもかしこもすっかり洗われ、汚れが落とされたかのようにきらきら光り自然の営みから、こちらの気分を一新させてくれる清々しさをもらっています。

うつしきホームページで担当している゛装い゛ではうつしきに集まる様々な衣服、装身具について自由に書かせてもらっています。先週はCOSMIC WONDERの白 光の夢 展で感じた色について。

 


色のことを調べているとあふれんばかりに情報があり、恐らく星の数に匹敵するのでは?と思うほど。

゛いろ゛ という言葉をとっても私たちが一般的に知る色彩は光によって目にうつる、ものの感じの一つ。と辞書にありました。

波長の違いで色に名が付き共通の言語として認識していること自体とても不思議な気がしてきました。

いろはにほへと(色は匂へど 散りぬるを)では、いろを物資的現象の比喩として使われています。

他にも男女の仲を表わしたり、血を表わすことから命の意味合いを持っていたりと、多様な側面を持った言葉と知りました。

どんどん興味が湧いてきて引き続き掘り下げていきたい分野となりました。

ここでは色に纏わるお話をひとつ。

今は昔、人々の間では、こんな話が流れていました。

ある晴れた日、広々とした高原を二人の姫があるいてゆきました。

アメノシタテル姫とコノハナサクヤ姫です。

まだ若い姫たちのおしゃべりはつきません。

ましてやサクヤ姫は、つい最近、笠沙埼でばったり会ったニニギノミコトの話で夢中でした。

ことさら、いきなりプロポーズされた姫の豊かな胸は、におうばかりにはずんでいました。

と、突然、空から白鳥が落ちるように舞いおりてきて、姫たちの前にうずくまりました。

瀕死の状態。

足でお腹のあたりをあがきながら、しきりに痛みを訴えているのです。

みると、くちばしに一本の草をくわえていました。

五十センチほどの茎に葉がたくさんついているホオズキのような草です。

咄嗟に姫たちは、<この草>をと気づき、急いで汁を飲ませてやりました。

と、どうでしょう、白鳥はみるみる元気をとりもどし、よみがえり、一度、思いきり羽ばたくと、姫たちに何度もお辞儀をして、やがて青空の涯に吸われるように消えてゆきました。

その時、姫たちは見たのです。

点々ととびちった草の汁が、白い翼のあちこちを美しいルリ色に染めていったのを。

しばらく呆然と立ちすくんでいた姫たちは、白鳥が神の化身であったことに気が付きました。

白鳥は、姫たちに染め物の智慧をさずけて飛び去ったのです。

やがて二人は、その草を探し出し、汁をしぼって、白い衣を染めてみました。

すると、衣はみるみる美しいブルーに染まりました。

感動した姫たちは、天を仰ぎ、深く頭をたれて神に感謝しました。

これが藍染めの始まり、という話です。

 

 

随分前に立ち寄った今は無きアジア料理屋さんでみつけた古い本の一節。

料理を待つあいだ夢中になって忘れたくないところをメモしていたのを思い出し、久しぶりに引っ張り出してみました。

たくさんの情報の中におぼれそうになるけれど、なぞるだけでなく

その時に心に留めたくなることは掬い上げられるよう習慣づけしていこう。

そしてその時だけで終わらず、学びのきっかけが出来たときに、

中へ中へと進んでいく好奇心を持っていよう。

 

小西 紗生

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