対 話 - はいいろオオカミ+花屋西別府商店 –

“誰も見たことのないものを表現したい“。


ロシアの古道具を扱う「古道具 はいいろオオカミ」店主の佐藤克耶さんと、「花屋 西別府商店」店主の西別府久幸さんは、いつもこの想いを胸に抱いているといいます。


お二人に話を伺うと、作品作りから空間構成にまで、一貫して誰も見たことのないものを作りたいという強い気持ちが言葉の端々に溢れていました。


その強い想いの根っことなる部分は、どうやって育まれたのか。そこには、強い好奇心と、幼い頃から描いている世界観を実現させる行動力、そして、心の衝動に従う素直な力にありました。

幼い頃の原体験


鹿児島県で生まれ育ち、幼い頃から祖父の影響もあって自然物での、ものづくりが好きだった西別府さん。ジブリ映画が描く不思議な植物の世界や色使いに大きく影響を受け、「夢のような世界観の中で暮らしたい。」と自身の部屋でも試行錯誤を重ねていたと言います。


「煙草の吸殻でタワーを作ったり、珈琲豆をドアに貼り付け、扉の開け閉めがある度に全部落ちるものを作ったり、いま振り返ると当時はむちゃくちゃくでした」と既存のルールに縛られず好奇心の赴くままに学生の頃から無心にものづくりをしていました。


同時に雑誌のストリートスナップなどでファッションの世界に興味持ち、上京後ファッションを学んだ西別府さんは、スタイリストのアシスタントとして多忙な日々を過ごしていました。


精神的に疲れていた時期に、スタッフ募集と書かれたお花屋さんを見つけます。そこでのオーナーとの出会いがひとつの大きなきっかけへ。世界中から取り寄せた花を囲む環境の中、好きなように作品作りをしてくれるように導いてくれたと振り返ります。


しかし、勤務から3年間程ずっと掃除をする状況が続いたといいます。


西別府 : 掃除が上手くなればなるほど、お花が綺麗に活けられるようになります。いくら美しいお花を仕入れても、私生活での視点を養っていないと美しく活けることは出来ない。掃除を継続することで、人とは違う視点を養えたのだと今は思っています。

何一つ下敷きがない中、最後までやりきる


「はいいろオオカミ」という印象的な店名は、ロシアの民話「イワン王子とはいいろおおかみ」から名付けたといいます。


「インテリアの専門学校に通っていたのですが、コンペで使う和箪笥を探して骨董市に赴いたり、古いものは当時から好きでした」。卒業後、建築士として建築設計事務所に勤めた後、2011年7月に、佐藤さんが最初は一人で表参道に「はいいろオオカミ」を店舗として構えることに。


その時期、西別府さんが勤務していた場所から近いこともあり、お互いの店を行き来するうちに自然と距離が縮まります。互いの感性や選ぶものの相性の良さから、自然な流れで「はいいろオオカミ」での初めての展示会は西別府さんの展示でした。


佐藤 : お互い駆け出しの時期で、とにかく何か動いていこうと思っていました。当時は展示会についての知識も無く、DM撮影も含めて二週間程で展示会を開催しました。何かを参考にして、展示を構成することもなく、何一つ下敷きがない中、最後までやりきりました。初めての展示会は、お客さんが沢山訪ねた訳ではないですが、すごく気持ちよかったです。このことがひとつのきっかけになり、イベントや展示などでユニット的な活動を重ねるうち、「それなら一緒に店をやろう」と2014年2月に現在の店の形になりました。

自然にゆがんだ造形も作品の表情として許容する


古道具と生花という対になる要素が共存する「はいいろオオカミ+花屋 西別府商店」。二人の間で一定の決めごとを設けたり、お店のコンセプトを明確に共有するようなことはありません。



「僕らふたりに共通していたのは、モノを売りたいというよりも、僕らが表現した世界観を味わってもらいたいという想い。こういう風にしていこうと共有はしないけど、お互い嫌いなものやことが似ている気がします」と話す佐藤さん。




古道具と生花という対になる要素が存在する空間を訪れると、そこに漂う香りや音など、五感を豊かにする景色が広がります。今回の展示作である「森の小さな灯」や、ショートストーリーがそれぞれ添えられている「小さな〜」シリーズなど、好奇心と自由を形にしたような作品づくりはどのような瞬間に思い浮かぶのだろうか。


西別府 : 佐藤と話している瞬間に思うこともありますし、植物(素材)との出会いが大きいです。道に落ちていた葉っぱの虫食いの穴が印象に残ったり、常に作品のことを考えています。瞬間的に浮かぶというよりは、最初はこれを光に当てたらどうなるんだろうと思い始めたりしながら、常に実験的に手を動かしながら進めていくことが多いです。


佐藤 : 西別府がつくるものは、自分の感性の外側から来るものが多く、そういうものを共有したいし、これからも作っていきたいです。

いい作品には、日常を変える力がある


うつしきでの初めての企画展も西別府さんの展示。今回で三度目となる展示では、新作でもある「森の小さな灯」が90点以上並びました。無数の植物の灯りの作品で照らされた空間は、うつしきでも今まで見たことのない光景が広がりました。植物の生命力を凝縮したような「森の小さな灯」は、日常を少し贅沢にするもの。


西別府 : 空間の照明を少し暗くて、植物の灯りだけで照らさている夢の国を作ろうと思っていました。この展示は“うつしき“という場所だからできたと思いますし、今後もまだ見たことない夢の世界を作っていきたいです。

今回の対話を終えて制作過程について作家さんから話を伺うと、作品に対しての見方や想い入れは強くなります。強くて美しい作品は、時間と手間のかかる地道な仕事から生まれるのだと気付かされます。日常生活で心掛けていることを尋ねると、映画やテレビを極力観ないと答えていたのも印象的でした。「まだ、誰も見たことのない景色を作りたいから、視覚的なものの影響は避けています」。お二人が描く世界がこれからどのように変化していくのか。いまからその時が待ち遠しいです。
聞き手・文 : 小野 義明

[ 展示会情報 ]

はいいろオオカミ+花屋西別府商店 展
– 光の種子、明日の芽 –
いつもの帰り道、目を凝らすと見えてくる無数の光の種子、導光は脇に逸れて水面を渡り森々へ
風に舞い、雨に穿たれ、やがて芽吹いた光は明日を照らす灯となって、また続いていく
草木生えはじめる生更木のうつしきに、森の小さな灯90点が並びます。
光が渦となって広がる景色、ご覧頂けましたら幸いです。