アクセサリー制作やギャラリーの運営など、表現に垣根をつくらず、形にしている川井有紗さん。
表現活動を行う上で、“純度の高さを大事にする”とはどういうことなのでしょうか──。
レコーディングを終えた直後に、ファーストアルバム『 ○ 』ができるまでの過程や想いについて伺いました。
有紗さんの創作活動の原点は、学生時代にさかのぼります。
当時、クラスメイトに話しても理解されないような想いを抱き、感情の蛇口をキュッときつく締めて感情が漏れないように、目の前のやるべきことをこなしながら日々を過ごしていたといいます。
でもそうやって、自分の感情たちを無視し続けても、その感情の存在がなくなるわけではありません。
「学生時代、家庭や学校に安心できる場所がなく、何かうまく噛み合わないという状況が続いていました。誰のことも悲しませたくないし、誰のことも傷つけたくないけど、私も傷ついてる。
自分が抱えている想いを誰にも言えなかったんですよ。
ひとりの世界で誰にも見せることない詩をずっと書いていました。いま振り返ると、表現をすることで ”自分を守りたい” っていう気持ちが強かったと思います。
表現することで、生きていられる──。
そんな想いが、どの活動のなかにも根底にあります」。
「約2年前から自分の声を使って表現し始め、湧き出るように様々な音や詩が生まれてきました」。
有紗さんが歌うことや詩の朗読を始めたのは、親交のある音楽家 haruka nakamuraとの共演がきっかけ。
”いろどり山” で暮らすようになってからはオリジナル曲が生まれ、その頃はじめたその音楽は、この土地で生きる想いや風土や暮らしから自然に生まれたものです。
“音楽家でもないのに、社会にその表現をだしても独りよがりのものになるだけじゃないか”
当初は、人前で唄うことや詩を朗読することを、想像すらしていなかったと振り返る有紗さん。
心の葛藤や微細な感情などを、表現として吐き出している演奏会を体感したことで、考え方に変化が生まれたといいます。
「『あぁ、こんなに生々しく感情を表現しても、それが誰かのためのものじゃなくても、人の心って動くんだ』と感動しました」。
“興味があることは、まずはやってみる”──それまで遠い世界の話に感じられていたことが「自分ごと」になっていく過程で、有紗さんはギターをはじめ、音を奏でる日々を過ごします。
周りの信頼できる人たちの背中を押す言葉やご縁が繋がり、各県のギャラリーで詩の朗読や演奏会を開催するまでにいたります。
有紗さんにとっての制作の原点は、植物がありのまま生きるように、今を生きる純粋な気持ちでただ生きてみたい、という想い。
「種を育ている過程は、誰にも知られてないんです。いろんなご縁の中で “純度高く” 取り組むことで、必ず誰かが見てくれて、それが予想もしない未来に向かうと信じています」。
アルバム『 ◯ 』 は、有紗さんにとって初めてとなる試み。新しい挑戦として沢山の準備を重ねてきたと想像に難くありません。
「私の音は洗練されていません。高度な技術もありません。音楽家でもありません。ただ、今までを生きて、今を生きて、未来を生きて行くだろう嘘偽りのないそのままが詰まっています。誰かの心の声、音に届きますように」。
今回の対話を終えて“自分らしく生きる” は ”あなたもあなたらしく生きていいんだ” と尊重すること──有紗さんのこれまでの軌跡を辿ると、人生で起こるどの出来事も、いまに繋がっていると実感します。この瞬間にしか生まれない美しさを込めた楽曲は、CDアルバム『 ◯ 』として販売を予定しております。この機会にぜひ手に取って、聴いて頂きたいです。
[ インタビュー記事 -笑達・川井 有紗- ]
[ インタビュー記事 -川井 有紗- ]
album 『 ◯ (えん) 』 音楽CD 全9曲収録
1 産声
2 あわうた
3 草の海
4 種まき唄
5 故郷
6 うつくしき人
7 波間
8 星々の詩
9 小夜に咲く花
作詞・作曲 | 川井 有紗
録音 | 江島 正剛
映像 | 小田 雄大
デザイン | 山香デザイン室 小野 友寛