うつしき

対 話 - MITTAN -

世界に遺る衣服や生地にまつわる歴史を元に、現代の民族服を提案する『MITTAN』。

“永く着続ける衣服を作り続けること”

ブランド設立当初から行っている、購入時期を問わず、ほつれや破れなどの修繕・染め直しを続けることもその想いから。

いまでも手間を惜しまず、人の手から生まれるものづくりを大切にしています。

ファッションという華やかな世界の影に


いま着ている服がどのような背景を経て作られているか知っているでしょうか。

完成されたものではなく、どんなふうに人の手を渡って作られていくのか、見ようとしなければ見えてこない世界。

「きちんとした背景で作られた服が、人の大事な記憶の傍らにある。そんな風になればよいなと考えています」

そう語るのは、MITTANを主宰している三谷武さん。

高校時代にマルタン・マルジェラなどモードの世界に夢中になり、専門学校でファッションデザインを学んだのち、アパレルメーカーに勤務。市場のニーズを先読みし、新たなデザインを生み出すアパレル業界の構造に、次第に違和感を抱くようになっていたという。

ファッションで巨額の資金が動く生産の背景には、貧しい国の人々が不当な労働を強いられている、という悲しい現実を知ることになったからだといいます。

「そうじゃないものづくりがしたい。そういう気持ちが芽生えたんです」

三谷さんは2013年のブランド設立当初から、”個人デザイナーの世界”でもなければ、”作家としてのものづくり”でもなく、チームや組織として動くという意思でスタート。

それは、アパレル業界の利益重視の企画や原価の圧縮、バングラデシュの縫製工場が入ったビルの崩壊事故などの、劣悪な制作環境自体を変えたいという想いがあるからです。

継続的な定番品を作り続ける意味


どんな時代にも流行り廃りはあり、人が着る服が変化していくのは当然のこと。そうした中でも、着続けられている衣服があります。

「民族服の世界をみると、土地や気候に適した理由で存在しています。毎シーズンのトレンドに合わせて民族服は変わらないじゃないですか。ラオスのレンテン族の方たちは、民族衣装が一番快適だといって着続けています。それは特に変える必要がないように思っています。永く服を着られるように、定番品を作り続けたいです」

MITTANは、一過性の時代の流れにとらわれることの無い、永く続く服を目指すために、ユニセックスな定番品を作り続けています。

コレクションブランドなどはシーズン毎に発注先の工場を変えるため、縫製工場などは安定した利益が見えない現状がある。安定していない発注関係があるからこそ、納期や金額など無理を強いる状況がいまも続いています。

その構造そのものを変えるためにもユニセックスな定番品を作り続けることで、ともに服をつくる工房や布の工場に、常に仕事を供給し続けることができる。

作る人に寄り添って生まれる服。結果としてそれは、着る人に寄り添った服になる。工場にあるデッドストックの生地、つまりすでにある資源から服を作ることは、季節ごとにゼロから生産するよりも工場の負荷を抑えられる。やがて定番となって、作り続けるほど工場の生産効率は上がる。すると価格を抑えたまま、強度を高めるなどひとつの服の品質を高めていける。そうして作られた服は、買った翌年も大切に着られるものになる。

広告にお金をかけない、セールなど行わないのも、一時的な関係性ではなく、安定的な仕事ができる環境作りを続けるため。

「環境や人に負荷が少なく、流行にも左右されず長期間着ることのできるデザインの服を、高額でごく少量ではなく手の届く価格である程度の量を供給し続けることが、アパレル業界の構造を変える社会的にも一番インパクトのある生産活動という意味で、組織として動くことを意識しています」

作った服の後ろには必ず人がいる

MITTANの解説サイトより。
衣服はきちんと手入れをすれば長い間役目を果たしてくれる。

MITTANでは、長く愛用してもらうために、購入時期は問わずに修繕・染め直しを行っています。

修繕サービスは時間や労力もかかるにも関わらず、通常のお直しの価格より、原価に近い価格帯で受けています。それは、既存のアパレル業界の生産過程への反抗心でもあるという。

「ブランド設立当初から行っているのですが、お直ししてまで着たい服にもう一度出会えるのは、やっててよかったなと感じる瞬間です。修繕する服を見ていると、お客様の気持ちに接する部分でもあり、服作りの改善する学びにもなっているので、これからも辞めないで続けていきます」

ひとつの衣服の生産過程には、数々の手間が集約されている。

MITTANの衣服の解説サイトでは、デザインの説明の他、染色や製織など携わってくれている人達や作り方を明文化して、衣服の背景を伝え続けています。

作った服の後ろには必ず人がいるから、と三谷さん。

生産の過程を知らないからこそ、廃棄の問題にも繋がっているのではないかともいいます。

「昔は既製服などなかったので、家族が縫製して作ったりしていた時期もあったと思います。もっとさかのぼると、自分たちの着る衣服は自分たちで育てていました。いまは破れたり穴が空いたりすると、すぐに着なくなり、服を捨てる期間が短いように感じています。生産工程がわからないものは、大事にしなくていいと思う人もいるかもしれません。でも、身近な人が作ったものはそんなに捨てないじゃないですか。背景を知ることで、もっと身近な存在になる。知らない事が必ずしも悪いことだとは思わないのですが、ものづくりをしている以上、知る機会を作り、伝え続ける必要があると思っています」

触れることでしか伝わらない心地良さ

10月3日より開催される『MITTAN 展』。今展では別注でうつしき仕様に制作いただいた衣も纏っていただけます。

MITTAN展では東京浅草で珈琲店を構える『蕪木』の珈琲豆とチョコレートを販売致します。日頃より制服としてMITTANの服を纏う蕪木さんの手で生みだされた味も合わせてお愉しみください。

そして、実際に手に取り触れることでしか伝わらない、身に纏った時の肌に寄り添うような心地良さを体感して頂きたい。

今回の対話を終えてものがあふれた世界で人は何をきっかけに選択していくのか。作品の良さはもちろん、その奥に潜む背景を知ることで、使い手と作品、その先にいる作り手が結びついていく。そうして選んだものは、永く大切に使い続けるものになるのだから。
聞き手・文 : 小野 義明

[ 展示会情報 ]

MITTAN 展
日程 10月3日(土)‐10月11日(日)
期間中休みなし
時間 13:00-18:00