くさともち
というテーマでふたたび、うつしき 学びの場を担当させていただきました。
植物とお菓子の可能性を探っていく中で出会った、
植物のすばらしさが直球で伝わる餅菓子、郷土の饅頭や団子。
米と豆は
言い換えれば植物の種です
米を炊いて
ときに餡と合わせて身近にある葉を添えたり、包んだり。
とてもシンプルなのに、そのバリエーションは地域ごと、家庭ごとに無数に存在します。
単純に食べられるものが少なかったという理由が大きかったのですが
不足だからこその知恵や想像力が何代にもわたって蓄積されたものたち。
足りないはおもしろいの始まり
(思えば、わたしのお菓子のスタートも、おいしい安心なお菓子屋さんが近くにないから
もう自分で作るしかない!という足りない状況から始まったことをふと思い出しました)
よくぞここまでというくらい米の挽き方や製法を微妙に変えて差異をつくり
それぞれの粉の特性にあったカタチで、時を超えて地域ごとに味や形や作り方が伝えられてきました。
その中でも特に餅は
神に供える、行事食、食事、保存食、間食、菓子
目的によって作り、使い分けられています。こんな食べ物、ほかにあるでしょうか?
知れば知るほど
餅や団子、饅頭の魅力、それにまつわる植物の関係は驚きがあって、興味が尽きません。
家庭で誰でも作れるのがまた大きな魅力です。
今回学びの場のおはなしをいただいて
長年開催してみたかった、会場にある植物の採取から始まり
季節の葉や草とお菓子の関係をお伝えしながら
ジャンルや数字にとらわれないお菓子を作る会をさせていただくことにしました。
冬のうつしきの敷地内の植物でどんなお菓子が作れるか。
最初に目についたのは、椿。
大人の会、ひとつめは椿餅を作ることとしました。
2月の季節菓子として和菓子屋に並ぶ椿餅
平安時代のころにできた日本最古の餅菓子とか、和菓子の原点などと言われているのですが
調べてみると、砂糖がなかった時代の椿餅は誰でもが口にできるものではなく
現在とはずいぶん違うお菓子でありました。
できるかぎり、当時のレシピに近いものを再現したものと、進化した現代の椿餅の2種を作って食べ比べたり
食されていた意外なシチュエーションや進化の理由、米粉の種類やそれぞれの特性にも触れ
少ない食材をいかに工夫して楽しんでいたかをおはなししました。
もうひとつ、
敷地内で目についたのはくちなしの実
もう何度もうつしきをおとずれているのに、
正面入り口前に立派なくちなしの実がなっていることに下見のときに初めて気づき、歓喜の声をあげました。
椿とくちなしといえば、わたしの中では、いがもちやいがまんじゅうなどと呼ばれ
愛知、滋賀、広島など様々な地域でつくられている饅頭。
餡入り饅頭に、くちなしの実、よもぎなどで色付けしたもち米を飾りにつけたものを椿の葉にのせて蒸します。
きれいに色づいたもち米が饅頭に飾り付けられ華やかになると、みなさんも一段と声が高くなります。
できあがったお菓子たちは敷地内で採取したハランの葉にのせていただき、
食べきれない分はハランに包んでイネ科の細い植物を紐として縛ってお持ち帰りしていただきました。
最初にみんなで植物を採取をすると、すぐにアイスブレイクするのもよいところです。
お菓子に合わせたのは椿の葉の茶
淡いピンク色をした優しい味のお茶でした
まさに植物づくし。
また、わずかに敷地内に芽生えていたよもぎを見つけたので
子どもの会はよもぎを使った摘み草餅を作ることにしました。
まず最初に仲良くなってほしい草は、やはりよもぎです。
これからシーズンを迎えるよもぎを見分けられるようになってほしくて。
自分の目で見て
香りを記憶して
実際にその草を探しにいって摘み
あく抜きをして
包丁で細かくして
すりこ木でペーストにして
蒸した米を蓬と合わせる
全行程を体験してもらいました。
よりたのしめるように予定を直前で変更して
どこの家にもあるボールとすりこ木でミニ餅つきをすることにしました。
女の子チームは、まるで擦るように小さな力で静かに効率よく餅とよもぎをなじませていきます。
男の子チームはすりこ木もボールもテーブルも砕けて割れるんじゃないかというくらい
まさに全身をつかってのけぞりながら、力をこめながら、よもぎを床に散らしながら餅をついてくれました。
かなりの時間ついてくれたのに、それでも力がありあまって
もはやすりこ木も手にしてないのに、その場で床を足でどんどん踏み鳴らし、エネルギーを発散させ
そのうち、テーブルの周りをぐるぐるみんなで回りだし、部屋を飛び出す勢い。
おもしろいなぁ、子どもって!!
子どもの会の隠れたメッセージは手間を惜しまず作ること。
知恵を絞り、道具を作り、機械を作り
少ない時間と労力でたくさん作ることができるようになったという歴史を数十分ですが体験をして
人生の経験の1ページにしてもらえたら、ということや
どこにでも好きの入り口はあって、どこを掘っても
この世のかわらない大切なことに近づくことができるということでした。
また、子どもの会に見学という形で参加していただいた大人のみなさんには
(結局、全面的にご協力いただきました)
いつも言っていますが、「じゃなきゃだめだ」ということは案外少なくて
杵と臼がなくても、電動餅つき機がなくても、遊びの延長で搗き立て餅を食べられたという
「出来る、から発想する」
という感覚をあらためて思い出す時間にしてもらえたら、と思いました。
会の感想を聞く時間に、まさにそのような言葉をきくことができて、とてもうれしかったです。
必要なものは、無限に与えられている世界
すばらしい植物たちとわたしたちの関係をジャンルを超えたお菓子たちを通してこれからもお伝えしていきたいです。
冬のうつしきの植物だからできること
わたしにとってもまた思い出深い学びの場となりました。
ご参加いただきましたみなさま
本当にありがとうございました。